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4D//STUDIO.MIKAWAの家づくりが「非常識」と言われる3つの理由

2026-07-29

「建築家に頼むと、何が違うんですか」

打ち合わせでよく聞かれます。

調べれば答えは出てきます。自由度が高い。デザイン性がある。そのぶん割高で、時間もかかる。だいたいどのサイトにも同じことが書いてあります。

ただ、それを読んで決められた方を、私たちはあまり見たことがありません。

違いは、完成した家に出るわけではないからです。出るのは、そこへたどり着くまでの進め方のほうです。

そして私たちの進め方は、正直なところ、業界の常識からずれています。「そんなやり方をする会社は聞いたことがない」と言われたこともあります。

この記事では、その「非常識」を3つ挙げます。土地の探し方、方角の選び方、広さの考え方。どれも、家づくりの本に書いてあるとおりにはやりません。

読んだうえで変だと思われたなら、それで構いません。ただ、理由だけは知っていただきたいと思っています。

家づくりの「正しい順番」とされているもの

家を建てようと思ったとき、ほとんどの方が同じ順番で動きます。

  • まず土地を探す

    建てる場所がなければ始まらない。だから不動産会社に行く。あるいは物件情報サイトを開く。

  • できれば南向きを選ぶ

    日当たりは大事。南向きは高いけれど、一生住む家だから。

  • 広さを確保する

    最低でも35坪。LDKは20畳ほしい。家族が増えても困らないように。

この順番を教えてくれるのは、住宅情報誌であり、不動産会社であり、先に家を建てた友人です。誰も間違ったことは言っていません。

ただ、この順番で進めた方の多くが、同じ場所で立ち止まります。

土地が決まり、建物の見積もりが出てきたときです。

「思っていた家が、この予算では建たない」

ここから、削る作業が始まります。削られるのは、たいてい建物のほうです。

家の模型と聴診器、電卓、チェックリストが並んだ机。家づくりの計画と予算を検討する場面

非常識① 土地を先に探しません

私たちは、土地探しの段階からご相談を受けます。ただし、土地を先に決めることはしません。順番が逆だと考えているからです。

これを言うと、たいてい驚かれます。「土地がないのに、何を話すんですか」と。

不動産会社は、建物の値段を知らされていない

不動産会社は、土地のプロです。相場を知り、法規制を知り、売り出し前の情報を持っている。土地を探すなら、これ以上ない相手です。

ただ、建物のプロではありません。

そこに悪意はありません。役割が違うだけです。不動産会社の仕事は土地を紹介することであって、その土地にいくらの家が建つかを計算することではない。

問題は、その状態で判断が下されることです。

土地は、家づくりで最初に決まる、いちばん大きな買い物です。そして一度買えば戻せません。にもかかわらず、建物にいくらかかるかを知らないまま、金額を決めている。

擁壁がある。高低差がある。地盤が弱い。前面道路が狭くて重機が入らない。こうした条件は、建物側の見積もりに数百万円単位で乗ってくることがあります。土地の価格表には載りません。

「土地が安く買えた」と思っていたのに、着工前に予算が足りなくなる。この順番で起きます。

建物側の人間を、土地を見る場に連れていく

打ち合わせテーブルで話す、株式会社スギテツの杉浦社長と4D/GROUNDWORK代表の塚本光輝

だから私たちは、土地を見る場に建築家が同行します。

その土地に何が建てられるのか。造成にいくらかかるのか。この形なら、こういう家になる。土地を見た段階で、建物まで含めて判断できます。

不動産会社と競合するわけではありません。土地を紹介するのは不動産会社の仕事です。私たちがやるのは、その土地でいいですよと言える人を、判断の場に一人増やすことです。

順番はこうなります。

建築会社を決める → 一緒に土地を見る → 土地と建物を合わせて予算を組む

土地を先に買ってしまうと、この順番には戻れません。

土地を先に決めてしまうと、ほとんどの方が予算を大きくオーバーします。不動産屋さんは土地を売りたい。建物のことは分からないので、建物を安く見てしまう。建物のプロと一緒に土地を選べば、後悔のない土地選びができます。

建築家・塚本光輝

MOVIE

土地探しの順番について、建築家が話しています。

動画を見る

非常識② 南向きの土地を勧めません

南向きの土地を探している方には、たいてい一度お聞きします。

「南向きがいい理由って、なんでしょうか」

意地悪で聞いているわけではありません。ここを一度考えていただくだけで、土地の選び方が変わることがあるからです。

南向きが良い理由を、説明できますか

返ってくる答えは、ほとんど同じです。「日当たりがいいから」。

では、その日当たりを、どう使うつもりですか。ここでたいてい止まります。

日当たりが良いこと自体は、間違いなく価値です。問題は、それが検証されないまま値段に変換されていることです。

同じ広さ、同じ場所、同じ形の土地でも、南向きというだけで金額が変わります。差額は数百万円になることもあります。

その差額を、ほとんどの方が疑わずに払っています。「南向きは高い」ではなく「南向きだから当然高い」と受け取られている。

家づくりでいちばん大きな買い物に、検証されていない前提が入り込んでいます。

使えない窓に、土地代を払っている

南向きの土地を買った方は、当然、南に大きな窓をつけます。

そして南側には、道路があります。あるいは隣の家があります。

通行人から室内が見えます。隣の窓と目が合います。夜になれば、明かりのついた部屋が外から丸見えになります。

結果として、レースカーテンを引いたままになります。

光は入ります。ただ、外は見えません。窓は開けられません。高い土地代を払って手に入れた日当たりが、布一枚の向こうにある状態です。

この話をすると、多くの方が「たしかに、実家もそうだった」とおっしゃいます。

私たちは、光は方角ではなく入れ方で決まると考えています。外周を閉じて、上から光を落とす。そうすれば、カーテンを開けたまま暮らせます。

この設計の考え方は、別の記事で詳しく書いています。
窓がない家の方が、なぜ明るいのか

南に面した土地は高いんです。それで南に大きな窓をつけるんですけど、外から丸見えになるので、結局一日中レースのカーテンを引くことになる。きちんと設計すれば、外からの視線はカットしながら、中庭や吹き抜けの窓からしっかり光を取り込めます。無理して高い南向きの土地を買う必要はないんですよ。

建築家・塚本光輝

MOVIE

南向きの土地について、建築家が話しています。

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非常識③ 広い家を勧めません

「最低でも35坪は必要でしょうか」「LDKは20畳ないと狭いですか」

よくいただく質問です。私たちの答えは、たいてい期待されているものと違います。

数字だけでは、広いかどうかは決まりません。

同じ15畳でも、体感はまるで違う

「リビング 広く見せる」で調べると、こういう答えが並びます。

背の低い家具を選ぶ。脚付きのソファで床を見せる。白や淡いグレーでまとめる。壁に鏡を置く。

どれも正しいことが書かれています。実際に効果もあります。

ただ、あれは家が建ってしまったあとの話です。決まった箱の中で、どう工夫するか。

設計の段階なら、もっと上流で手が打てます。

広さの体感を決めているのは、床面積ではありません。視線がどこまで抜けるかです。

15畳のリビングでも、視線が中庭を越えて奥まで抜けていけば、広く感じます。抜ける方向は横だけではありません。吹き抜けで上に抜ければ、床面積は変わらないまま、空間の容積が変わります。逆に30畳あっても、カーテンで視線が止まれば、そこが部屋の境界になります。

ホテルの部屋を思い出してみてください。決して広くはありません。それでも窓の外に景色が広がっていると、窮屈だとは感じないはずです。

吹き抜けの上から見下ろしたリビングダイニング。中庭に面した窓から光が入り、視線が上下と外へ抜けている

床は15畳。視線は、上へも外へも抜けていく。

坪数を増やすのは、いちばん高くつく解決策

広さが足りないと感じたとき、いちばん分かりやすい解決策は、坪数を増やすことです。

そして、いちばん高い解決策でもあります。

1坪増やせば、基礎が増えます。壁も、屋根も、断熱材も、内装も増えます。載せる土地も大きくなり、固定資産税が上がります。掃除する床が広がり、冷暖房する空気の量が増えます。建てたあとも、ずっと払い続けることになります。

一方、視線の抜けをつくるのに必要なのは、壁と窓をどこに置くかを変えることです。面積は増えません。

削るべきは坪数で、守るべきは抜けです。順番を逆にすると、広い家に住みながら、狭さを感じることになります。

30畳あってもね、レースのカーテンで遮られていたら狭く感じるんです。15畳でも視線が抜けていれば、圧倒的に広く感じる。広さって、床の面積じゃなくて、どこまで目が届くかで決まるんですよ。

建築家・塚本光輝

3つは、同じひとつの間違いです

ここまで3つ挙げました。土地、方角、広さ。それぞれ別の話に見えるかもしれません。

並べてみると、同じ構造をしています。

土地を先に買う。南向きに上乗せを払う。坪数を増やす。

3つとも、建物ではないものにお金を移す判断です。場所に払い、方角に払い、面積に払う。そして予算には限りがあるので、どこかが削られます。

削られるのは、いつも建物です。

窓の位置を詰めるより、坪数を確保するほうが分かりやすい。設計に時間をかけるより、南向きを買うほうが安心できる。数字で比べられるものに、お金は流れていきます。

けれど、住み始めたあとに毎日触れているのは、削られたほうです。朝の光の入り方。視線が抜ける方向。カーテンを開けられるかどうか。

だから私たちは、順番を変えます。

建物をどう建てるかを先に決めて、それに合う土地を選ぶ。

非常識と言われるのは、この一点です。3つの理由は、この順番から出てきた結果にすぎません。

一般的な順番

  1. 土地を決める
  2. 方角で上乗せを払う
  3. 坪数を確保する
  4. 建物を削る

4D//STUDIO.MIKAWAの順番

  1. 建物を決める
  2. 合う土地を選ぶ
  3. 予算を建物に残す
  4. 削らない

削るものが先に決まってしまう順番か、残すものを先に決める順番か。

ここまで読んで、話がうますぎると感じた方もいると思います。

自分の会社のやり方を正しいと書いているのだから、そう読めて当然です。私たちもそう思います。

なので、確かめてください。建築家本人が話している動画がありますし、実際に建った家も見ていただけます。文章より、そちらのほうが早いはずです。

よくある質問

相談の場でよくいただく質問をまとめました。聞きにくいことほど、先に知っておいていただいたほうがよいと思っています。

建築家に頼むと、やはり高くなりますか

総額で比べていただきたい、というのが答えになります。

「建築家は高い」という印象には、理由があります。設計料という項目が見積書に立つからです。工事費と別に並ぶので、その分だけ上乗せされているように見えます。

一方で、見積書に立たないコストもあります。住宅展示場の建設費と維持費、テレビCMや折込チラシ、営業担当の人件費。これらはどこかから出ています。建築費に含まれる形で、施主が負担しています。

私たちは展示場を持っていません。広告も出していません。建築家と工務店が直接組んでいるので、間に入る会社もありません。

見積書の項目の数ではなく、総額と、その中身で比べてください。

土地を先に買ってしまいました。もう手遅れですか

手遅れではありません。

この記事は「土地を先に決めないでください」という話ですが、すでに決まっている方をお断りしているわけではありません。むしろ、その土地で何ができるかを考えるのが設計の仕事です。

高低差がある。隣家が近い。北向きで日当たりが悪いと言われた。そうした条件は、設計で扱えることが少なくありません。条件のある土地ほど、設計で差が出ます。

ただし、早いほど選択肢は多くなります。地盤改良や造成の方法、建物の配置。着工が近づくほど動かせる範囲は狭まります。

土地をお持ちの方も、まずご相談ください。

建築家のこだわりを、押しつけられませんか

提案はします。ただし、説明します。

「なんとなくこのほうが格好いいから」という提案はしません。この窓をここに置くのは、隣家の視線を避けながら光を入れるためです。壁を立ち上げるのは、外構をつくらずに視線を切るためです。

理由が説明できないものは、こだわりではなく好みです。

そのうえで、納得できなければ言ってください。「そこは好きじゃない」で構いません。住むのは私たちではありません。

設計事務所と工務店、どちらに頼んでいることになりますか

両方です。

設計を担当するのは、建築家集団4D/GROUNDWORK。施工を担当するのは、東三河で80年以上の実績がある株式会社スギテツです。この2社が組んでいるのが4D//STUDIO.MIKAWAです。

一般的には、設計事務所に頼むと施工会社を別に探す必要があります。工務店に頼むと設計の自由度が下がることがあります。どちらかを選ぶ形になりがちです。

私たちは設計と施工が最初から組んでいるので、窓口はひとつです。設計した建築家が現場に入るため、図面と実物のずれも起きにくくなります。

まとめ

「建築家に頼むと何が違うのか」

冒頭の問いに戻ります。

違いは、完成した家に出るわけではありません。写真だけを見比べても、たぶん分かりません。

違いが出るのは、そこにたどり着くまでの進め方です。

土地を先に決めない。方角に上乗せを払わない。坪数で広さを測らない。並べると3つに見えますが、言っていることはひとつです。

建物をどう建てるかを先に決めて、それに合う土地を選ぶ。

この順番なら、削るものが先に決まってしまうことがありません。

非常識と言われるやり方です。それでも、住み始めたあとに毎日触れるのは建物のほうだと、私たちは考えています。

建築家が手描きした住宅の平面・立体スケッチ
建築家が手描きした住宅の外観・内観スケッチ