4D//STUDIO.MIKAWAの家づくりが「非常識」と言われる3つの理由
「建築家に頼むと、何が違うんですか」
打ち合わせでよく聞かれます。
調べれば答えは出てきます。自由度が高い。デザイン性がある。そのぶん割高で、時間もかかる。だいたいどのサイトにも同じことが書いてあります。
ただ、それを読んで決められた方を、私たちはあまり見たことがありません。
違いは、完成した家に出るわけではないからです。出るのは、そこへたどり着くまでの進め方のほうです。
そして私たちの進め方は、正直なところ、業界の常識からずれています。「そんなやり方をする会社は聞いたことがない」と言われたこともあります。
この記事では、その「非常識」を3つ挙げます。土地の探し方、方角の選び方、広さの考え方。どれも、家づくりの本に書いてあるとおりにはやりません。
読んだうえで変だと思われたなら、それで構いません。ただ、理由だけは知っていただきたいと思っています。
家づくりの「正しい順番」とされているもの
家を建てようと思ったとき、ほとんどの方が同じ順番で動きます。
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まず土地を探す
建てる場所がなければ始まらない。だから不動産会社に行く。あるいは物件情報サイトを開く。
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できれば南向きを選ぶ
日当たりは大事。南向きは高いけれど、一生住む家だから。
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広さを確保する
最低でも35坪。LDKは20畳ほしい。家族が増えても困らないように。
この順番を教えてくれるのは、住宅情報誌であり、不動産会社であり、先に家を建てた友人です。誰も間違ったことは言っていません。
ただ、この順番で進めた方の多くが、同じ場所で立ち止まります。
土地が決まり、建物の見積もりが出てきたときです。
「思っていた家が、この予算では建たない」
ここから、削る作業が始まります。削られるのは、たいてい建物のほうです。

非常識① 土地を先に探しません
私たちは、土地探しの段階からご相談を受けます。ただし、土地を先に決めることはしません。順番が逆だと考えているからです。
これを言うと、たいてい驚かれます。「土地がないのに、何を話すんですか」と。
不動産会社は、建物の値段を知らされていない
不動産会社は、土地のプロです。相場を知り、法規制を知り、売り出し前の情報を持っている。土地を探すなら、これ以上ない相手です。
ただ、建物のプロではありません。
そこに悪意はありません。役割が違うだけです。不動産会社の仕事は土地を紹介することであって、その土地にいくらの家が建つかを計算することではない。
問題は、その状態で判断が下されることです。
土地は、家づくりで最初に決まる、いちばん大きな買い物です。そして一度買えば戻せません。にもかかわらず、建物にいくらかかるかを知らないまま、金額を決めている。
擁壁がある。高低差がある。地盤が弱い。前面道路が狭くて重機が入らない。こうした条件は、建物側の見積もりに数百万円単位で乗ってくることがあります。土地の価格表には載りません。
「土地が安く買えた」と思っていたのに、着工前に予算が足りなくなる。この順番で起きます。
建物側の人間を、土地を見る場に連れていく

だから私たちは、土地を見る場に建築家が同行します。
その土地に何が建てられるのか。造成にいくらかかるのか。この形なら、こういう家になる。土地を見た段階で、建物まで含めて判断できます。
不動産会社と競合するわけではありません。土地を紹介するのは不動産会社の仕事です。私たちがやるのは、その土地でいいですよと言える人を、判断の場に一人増やすことです。
順番はこうなります。
建築会社を決める → 一緒に土地を見る → 土地と建物を合わせて予算を組む
土地を先に買ってしまうと、この順番には戻れません。
土地を先に決めてしまうと、ほとんどの方が予算を大きくオーバーします。不動産屋さんは土地を売りたい。建物のことは分からないので、建物を安く見てしまう。建物のプロと一緒に土地を選べば、後悔のない土地選びができます。
建築家・塚本光輝
MOVIE
土地探しの順番について、建築家が話しています。
動画を見る非常識② 南向きの土地を勧めません
南向きの土地を探している方には、たいてい一度お聞きします。
「南向きがいい理由って、なんでしょうか」
意地悪で聞いているわけではありません。ここを一度考えていただくだけで、土地の選び方が変わることがあるからです。
南向きが良い理由を、説明できますか
返ってくる答えは、ほとんど同じです。「日当たりがいいから」。
では、その日当たりを、どう使うつもりですか。ここでたいてい止まります。
日当たりが良いこと自体は、間違いなく価値です。問題は、それが検証されないまま値段に変換されていることです。
同じ広さ、同じ場所、同じ形の土地でも、南向きというだけで金額が変わります。差額は数百万円になることもあります。
その差額を、ほとんどの方が疑わずに払っています。「南向きは高い」ではなく「南向きだから当然高い」と受け取られている。
家づくりでいちばん大きな買い物に、検証されていない前提が入り込んでいます。
使えない窓に、土地代を払っている
南向きの土地を買った方は、当然、南に大きな窓をつけます。
そして南側には、道路があります。あるいは隣の家があります。
通行人から室内が見えます。隣の窓と目が合います。夜になれば、明かりのついた部屋が外から丸見えになります。
結果として、レースカーテンを引いたままになります。
光は入ります。ただ、外は見えません。窓は開けられません。高い土地代を払って手に入れた日当たりが、布一枚の向こうにある状態です。
この話をすると、多くの方が「たしかに、実家もそうだった」とおっしゃいます。
私たちは、光は方角ではなく入れ方で決まると考えています。外周を閉じて、上から光を落とす。そうすれば、カーテンを開けたまま暮らせます。
この設計の考え方は、別の記事で詳しく書いています。
窓がない家の方が、なぜ明るいのか
南に面した土地は高いんです。それで南に大きな窓をつけるんですけど、外から丸見えになるので、結局一日中レースのカーテンを引くことになる。きちんと設計すれば、外からの視線はカットしながら、中庭や吹き抜けの窓からしっかり光を取り込めます。無理して高い南向きの土地を買う必要はないんですよ。
建築家・塚本光輝
MOVIE
南向きの土地について、建築家が話しています。
動画を見る非常識③ 広い家を勧めません
「最低でも35坪は必要でしょうか」「LDKは20畳ないと狭いですか」
よくいただく質問です。私たちの答えは、たいてい期待されているものと違います。
数字だけでは、広いかどうかは決まりません。
同じ15畳でも、体感はまるで違う
「リビング 広く見せる」で調べると、こういう答えが並びます。
背の低い家具を選ぶ。脚付きのソファで床を見せる。白や淡いグレーでまとめる。壁に鏡を置く。
どれも正しいことが書かれています。実際に効果もあります。
ただ、あれは家が建ってしまったあとの話です。決まった箱の中で、どう工夫するか。
設計の段階なら、もっと上流で手が打てます。
広さの体感を決めているのは、床面積ではありません。視線がどこまで抜けるかです。
15畳のリビングでも、視線が中庭を越えて奥まで抜けていけば、広く感じます。抜ける方向は横だけではありません。吹き抜けで上に抜ければ、床面積は変わらないまま、空間の容積が変わります。逆に30畳あっても、カーテンで視線が止まれば、そこが部屋の境界になります。
ホテルの部屋を思い出してみてください。決して広くはありません。それでも窓の外に景色が広がっていると、窮屈だとは感じないはずです。

床は15畳。視線は、上へも外へも抜けていく。
坪数を増やすのは、いちばん高くつく解決策
広さが足りないと感じたとき、いちばん分かりやすい解決策は、坪数を増やすことです。
そして、いちばん高い解決策でもあります。
1坪増やせば、基礎が増えます。壁も、屋根も、断熱材も、内装も増えます。載せる土地も大きくなり、固定資産税が上がります。掃除する床が広がり、冷暖房する空気の量が増えます。建てたあとも、ずっと払い続けることになります。
一方、視線の抜けをつくるのに必要なのは、壁と窓をどこに置くかを変えることです。面積は増えません。
削るべきは坪数で、守るべきは抜けです。順番を逆にすると、広い家に住みながら、狭さを感じることになります。
30畳あってもね、レースのカーテンで遮られていたら狭く感じるんです。15畳でも視線が抜けていれば、圧倒的に広く感じる。広さって、床の面積じゃなくて、どこまで目が届くかで決まるんですよ。
建築家・塚本光輝
3つは、同じひとつの間違いです
ここまで3つ挙げました。土地、方角、広さ。それぞれ別の話に見えるかもしれません。
並べてみると、同じ構造をしています。
土地を先に買う。南向きに上乗せを払う。坪数を増やす。
3つとも、建物ではないものにお金を移す判断です。場所に払い、方角に払い、面積に払う。そして予算には限りがあるので、どこかが削られます。
削られるのは、いつも建物です。
窓の位置を詰めるより、坪数を確保するほうが分かりやすい。設計に時間をかけるより、南向きを買うほうが安心できる。数字で比べられるものに、お金は流れていきます。
けれど、住み始めたあとに毎日触れているのは、削られたほうです。朝の光の入り方。視線が抜ける方向。カーテンを開けられるかどうか。
だから私たちは、順番を変えます。
建物をどう建てるかを先に決めて、それに合う土地を選ぶ。
非常識と言われるのは、この一点です。3つの理由は、この順番から出てきた結果にすぎません。
一般的な順番
- 土地を決める
- 方角で上乗せを払う
- 坪数を確保する
- 建物を削る
4D//STUDIO.MIKAWAの順番
- 建物を決める
- 合う土地を選ぶ
- 予算を建物に残す
- 削らない
削るものが先に決まってしまう順番か、残すものを先に決める順番か。
ここまで読んで、話がうますぎると感じた方もいると思います。
自分の会社のやり方を正しいと書いているのだから、そう読めて当然です。私たちもそう思います。
なので、確かめてください。建築家本人が話している動画がありますし、実際に建った家も見ていただけます。文章より、そちらのほうが早いはずです。
よくある質問
相談の場でよくいただく質問をまとめました。聞きにくいことほど、先に知っておいていただいたほうがよいと思っています。
建築家に頼むと、やはり高くなりますか
総額で比べていただきたい、というのが答えになります。
「建築家は高い」という印象には、理由があります。設計料という項目が見積書に立つからです。工事費と別に並ぶので、その分だけ上乗せされているように見えます。
一方で、見積書に立たないコストもあります。住宅展示場の建設費と維持費、テレビCMや折込チラシ、営業担当の人件費。これらはどこかから出ています。建築費に含まれる形で、施主が負担しています。
私たちは展示場を持っていません。広告も出していません。建築家と工務店が直接組んでいるので、間に入る会社もありません。
見積書の項目の数ではなく、総額と、その中身で比べてください。
土地を先に買ってしまいました。もう手遅れですか
手遅れではありません。
この記事は「土地を先に決めないでください」という話ですが、すでに決まっている方をお断りしているわけではありません。むしろ、その土地で何ができるかを考えるのが設計の仕事です。
高低差がある。隣家が近い。北向きで日当たりが悪いと言われた。そうした条件は、設計で扱えることが少なくありません。条件のある土地ほど、設計で差が出ます。
ただし、早いほど選択肢は多くなります。地盤改良や造成の方法、建物の配置。着工が近づくほど動かせる範囲は狭まります。
土地をお持ちの方も、まずご相談ください。
建築家のこだわりを、押しつけられませんか
提案はします。ただし、説明します。
「なんとなくこのほうが格好いいから」という提案はしません。この窓をここに置くのは、隣家の視線を避けながら光を入れるためです。壁を立ち上げるのは、外構をつくらずに視線を切るためです。
理由が説明できないものは、こだわりではなく好みです。
そのうえで、納得できなければ言ってください。「そこは好きじゃない」で構いません。住むのは私たちではありません。
設計事務所と工務店、どちらに頼んでいることになりますか
両方です。
設計を担当するのは、建築家集団4D/GROUNDWORK。施工を担当するのは、東三河で80年以上の実績がある株式会社スギテツです。この2社が組んでいるのが4D//STUDIO.MIKAWAです。
一般的には、設計事務所に頼むと施工会社を別に探す必要があります。工務店に頼むと設計の自由度が下がることがあります。どちらかを選ぶ形になりがちです。
私たちは設計と施工が最初から組んでいるので、窓口はひとつです。設計した建築家が現場に入るため、図面と実物のずれも起きにくくなります。
まとめ
「建築家に頼むと何が違うのか」
冒頭の問いに戻ります。
違いは、完成した家に出るわけではありません。写真だけを見比べても、たぶん分かりません。
違いが出るのは、そこにたどり着くまでの進め方です。
土地を先に決めない。方角に上乗せを払わない。坪数で広さを測らない。並べると3つに見えますが、言っていることはひとつです。
建物をどう建てるかを先に決めて、それに合う土地を選ぶ。
この順番なら、削るものが先に決まってしまうことがありません。
非常識と言われるやり方です。それでも、住み始めたあとに毎日触れるのは建物のほうだと、私たちは考えています。

